ROUND3◎木材長者に鉱石王、どっちがお好き?

テキスト/安田 均 
 どの分野にも、だれでも知っている作品というのがある。実際には見たことや遊んだことがなくても、名前だけは知っているという、いわばスタンダードだ。
 ボードゲームでは、モノポリーなんかが代表例かもしれないが、この『カタンの開拓者たち』っていうのも、将来ひょっとしたらそうなってくるかもしれないと思わせる快作だ。
 それくらい、よくできている。ごく普通に、おもしろいゲームを遊びたいという人は、ぜひ一度試してほしい。やみつきになる確率は、けっこう高いはずだ。
 このゲームは、多人数ゲームのおもしろいところを、実にバランスよくぎゅっと圧縮してある。運とスキル、交渉と自由度がじつに巧みにブレンドされていて、いろんなプレイヤーの好みがそれなりに満たされる。
 ゲームにもいろいろあって、こういうタイプでないとおもしろくない、という人はけっこういる。例えば、運の要素が大きいと嫌だという人や、その逆に、お利口さんでないと勝てないゲームなんてやりたくないという人も多い。人の足を引っ張るゲームが好きな人もいれば、そういうのが嫌で、プレイヤーそれぞれが勝手気ままに遊べる自由度の高いゲームがいいという人も、よく見かける。ゲームをその場で幅広く選べるなら、こうした要請もなんなく満たされるけれど、普通はそうではないだろう。これはゲームの深みにはまってくると見落しがちなことで、ぼくもRPGとかを仕事にしていて、あるとき‘そんなにたくさんサイコロのある環境がおかしい’といわれて愕然としたことがある。
 そりゃ、そうだ。普通の家庭でサイコロなんて、マージャンセットの中くらいにしか入ってないものなあ(平均2個)。
 その意味で、『カタン』のようにバラエティとバランスに富んだ作品は、‘とにもかくにも、これさえあれば大丈夫’といった感じで、いろんなメンバーと気軽に遊べる。これで満足できなければ、そこからさらに深みにはまればいいし、あるいはもっと軽いゲームを探せばいい。
 ゲームの説明を簡単にしておこう。6角形のタイルをいくつか並べ舞台となるカタン世界を決める。タイルからは、それぞれ木材・粘土・穀物・羊毛・鉱石の5つの資源が採れのだが、今回はどんな世界になるのだろうと、この時点でワクワクする。
 ゲームの目的は、この資源を使って開拓地を増やしたり、発展させて都市にしたり、街道を延ばしていくこと。それぞれに応じて勝利ポイントが加算され、先に10勝利ポイントを獲得したプレイヤーが勝者となる。自分の開拓地に隣接したタイルからしか資源は採れず、カタンの資源配置は毎回変わるからどこに開拓地を作っていこうかと考えるのが楽しい。それぞれのタイルには、数値チップが置かれる。プレイヤーの手番に2つのサイコロを振って、その目の合計と合致したチップの置かれたタイルから資源が採れるのだ。
 資源の獲得はサイコロまかせだから、思ったものが来るとは限らない。だからプレイヤ
ー同士の交渉もよく行なわれる−−というか、交換しないと、たいてい開拓地や道路建設競争におくれをとってしまうのだ。
 サイコロ目のいいプレイヤーは交渉する必要はないが、そうなると他のプレイヤーがそれを補おうと、彼ら同士で交渉をすすめてしまう。
 多人数ゲームは、有利なプレイヤーを他のプレイヤーがどう牽制するかが大切なのだが、『カタン』の場合はそれが露骨なかけひきではなく、割り切って行なわれるのがよくできている。権謀術数や口八丁は、見た目の有利不利な状況が明らかなので、おのずと抑え目になり、納得できる形になりやすい。
 それとすばらしいのは、他のプレイヤーの手番でも、サイコロで資源が手に入ってくるので、自分のプランにふけりながら、いろいろ考えたりできる。手番プレイヤーが長考して、その間、何もできずにじっと待っていないといけないということはない。
 とにかく、いろんな意味で、バランスの見事にとれたゲームだ。
 こうした短い説明では、なかなかおもしろさは伝えにくいのだけれど、遊んでみてもらったらおわかりになると思う。アクワイアやブラフと並んで、ぼくのいつでも遊びたいゲームの上位にずっといる、すばらしい傑作だ。