ROUND5◎嘘つきサイコロの快感

テキスト/安田 均 
 カードやボードと並んで、ゲームに欠かせないもの−−それはサイコロ。
 かつて流行ったページをめくって遊ぶゲームブックというのがサイコロを使っていて、学校で「バクチはいかん」と、先生に取り上げられたという話をよく聞いた。もっとも、生徒にも強者がいて、「ちがいますよ、これは数学の確率計算の元になるものです。ほら6面体だけじゃなくって、10面体とかいろいろあるでしょ」と先生を説得し、いっしょにゲームを遊んだという笑い話も聞いたことがある。
 確かに、サイコロというのは、乱数を発生させるにはもっとも手頃な装置だし、そこで出た目をゲームに使うのは、非常に適している。
 ここでは、そのサイコロゲームの決定版ともいうべき、おもしろいものを紹介しよう。『ブラフ』−−別名、ライヤーズ・ダイス−−訳すと、“はったり”とか“嘘つきサイコロ”になる。
 これはおもしろい、というより、騒々しいゲームだ。つまり、ゲームがすぐに盛り上がってにぎやかになるのと、プレイヤー全員がサイコロをカップに入れて毎回がらがら振るので、かなりうるさくなるということ。他人に迷惑のかかるところでは、遊べないのが唯一欠点といえるだろうか。
 まっ、ここ一番というときに、自分の勘が当たっていたり、乾坤一擲、えいっと振るときには、どうしても大声が出てしまうのはしかたないんだけどね。プレイヤーは、それぞれが5個のサイコロを持つ。そうして全員がこれらをカップに入れて振る。
 プレイヤーはこっそり自分のカップの中をのぞき、それを判断材料に、全員のサイコロのうち“どの目が、何個あるか”を宣言する。例えば、6人が振ったあと(サイコロは全部で30個)、スタートプレイヤーは「2の目が全部で9個」というようにしてはじめるわけだ。
 で、左隣りのプレイヤーは、これがホントかどうかを当てる、というゲーム。嘘だと思うなら「ブラフ」と言い、当たってるなと思うなら、今度は自分が引き継いで、前より高い出目かサイコロの数を宣言しないといけない。先の例なら「5の目が9個」とか「2の目が11個」というように言うわけだ。「ブラフ」が告げられると、全員がカップを開けて、当たったかどうか判断する。をついたか、ホントだったかで、プレイヤーのサイコロの数が減らされる。これを何度か繰り返し、最後までサイコロを残したプレイヤーの勝ち。ルールの基本は簡単。でも、出目や数がどんどん上がっていっても、「ブラフ」と言うに言われず、「ええい、やけくそだ!」とばかりに、サイコロをカップの外に出して、振り直す(追加ルールで、これがミソ)−−そのときのなんとも言えない高揚感は、サイコロゲーム特有の楽しさだろう。
 以前に4人でサイコロが15個くらいのとき、「6の目が10個」という宣言があって、「いや、まてよ、ひょっとしたら……」と思い、結局は「6の目が11個」に吊り上げて振り直したら、なんとそれがぴったり。みんながひっくり返ったこともあった。
 でも、『ブラフ』の本当の魅力は、実はサイコロを振って狙うのじゃなく、振った後にどうするかを考える、という点だ。
 つまり、宣言の上げ方で、どのプレイヤーあたりで限界に近づくかがある程度考えられるし、逆にそれが外れて、やむをえずサイコロ振り直しに賭けざるをえなくなったりする。最後でサイコロの減ったもの同士の勝負になると、これは本当に読みあいの心理戦そのものだ。根拠のない“はったり”じゃなく、根拠があった上での“ブラフ”−−そこがたまらない。運(乱数)に翻弄されるんじゃなく、それをどう味方に引き込むかがおもしろい究極のサイコロゲームと言えるんじゃないだろうか。