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| いちばん好きなゲームは何ですか、と聞けば、いろんな答えが返ってくるにちがいない。 コンピュータゲームはあまりにも多いから除くにしても、将棋や麻雀、RPGやトレカなど、あっというまにこの欄がいっぱいになるはずだ。 でも、ぼくにとっては、これから紹介するアクワイアというボードゲームがなんといっても一番。20歳の頃、このゲームと出会った体験は強烈なものだった。世の中には、こんなおもしろいボードゲームもあるんだと知った思い出が、いまも甦ってくる。 モノポリーも楽しかったけど、ぼくはサイコロ運がそれほどよくないせいか、あのゲームであまりおいしい思いをしたことがない。 それに対して、アクワイアは負けても楽しかった。あとで説明するけれども、アクワイアでは悲惨な負け方がある。資金不足に陥って何もすることがないまま、じっとゲームが終わるのを待たねばならないこともある。 だけど、それは1回だけ−−こいつを経験すると、このゲームには資金不足が必ず1回は訪れて、それを通り越してからが勝負だとわかる。基本的にはプレイヤー全員が初めの頃そういう状態に陥りやすいから、そのとき他のプレイヤーの誰と“一時的に”組むかで、その後の展開がいろいろおもしろくなると、2回目のゲームからはすぐにわかるはずだ。 そう、表だってではなく、こっそりと一時的な同盟みたいなものが、盤上のホテルチェ−ンや株券の売買などの展開を睨みながら、自然に行なわれていくゲームなのだ。 こうしたゲームのスマートさは、30年前にはたしかに画期的だった。 そして、このゲームの質の高さは、アメリカやドイツでずっと評価されてきた。ゲーム会社が潰れても、このゲームは常に新たなパッケージで出てきたし、今回も大手のハスブロ社から、新アバロンヒルゲームの第1弾として、見事にアクワイアが甦ったのだ。 このゲームではプレイヤーは経営者として、ホテルチェーンを盤に置いていくのだが、それと同時に投資家としても株券を競って買って、その筆頭株主をめざす。1位と2位の株主には、ホテルが合併して買い取られたとき、大きなボーナスが入り、その資金で、新たなホテルチェーンを再び展開できるからだ。 難しそうに聞こえるかもしれないが、ゲームは簡単。盤上の9×13のマス目に、手元に引いた6枚の駒(ホテルチェーン)から1つを置いて、その後、7種類あるホテルごとにそれぞれ25枚ある株券を3枚まで買うだけ。 やがて、ホテルチェーンは盤上で大きくなってくっつき、合併が起こる。合併の時、小さなホテルチェーンは大きな方に吸収されるんだけど、このとき資金が手に入るのは、小さなホテルチェーン所有者のボーナスと株券売却だけ−−ここが、このゲームのミソだ。 あとは、資金が手に入らないからだ。 もちろん、大きくなったホテルの方の株価額は上がっているが、大きくなりすぎると資金に換金できるのはゲームが終了したときだけ。つまり、ゲーム活動を続けるには、いかに小さなホテルを合併させ、ボーナスをもらい、株券を売って、手元に流動資金を持つかが大事になってくる(新たなホテルチェーン展開や、それに伴う株券競争のためにね)。 このゲームにはもうひとつ、合併の際、株券を売却するかわりに、2:1で合併されるホテルの方から、合併する方に交換もできる。これを使うと、今度は大きなホテルの筆頭株主競争が急にあわただしくなったりもする。いわゆる“乗っ取り”に遭いかねないからだ。小さなホテルチェーンの株を買えるだけ買っておいて、合併して交換し、大きなチェーンのそれまでの筆頭株主の株券数を超えてしまおうというやり方だ。 さらには、合併されたチェーンの株を、屑株になる危険を承知で売らずに持っておいて、新たに同名のホテルチェーンとして設立し、即座に筆頭株主として、またも、大きなホテルチェーンに合併させてボーナスを稼ぐというやり方もある。いわゆる“転がし”だね。 なんだか、この説明を聞いていて、現実にアメリカなどで多い、M&Aや自分の設立した会社を簡単に売ってしまう例を連想した人−−その通り。 アクワイアが近年の資本主義経済をまねたというよりも、最近の経済活動がすでに40年近く昔に作られたこのゲームになんだか似てきていると言ってもいいくらいだ。 つまり、あらゆる意味で、このゲームはクラシックといっていいだろう。 お薦めします。おもしろいよ、ゲームとしてホントに。 |