ROUND7◎恥も外聞もない貴族たち

テキスト/安田 均 
 ボードやカードゲームの世界は着実に広がっていて、いろんなところからおもしろいものが続々登場するようになってきた。
 ここで紹介するのは、フランスのカードゲーム。
 まず何よりも、絵柄が美しい。フランスはコミックが盛んで、日本のアニメの影響も大きいというのが納得できる。
 中世が舞台のゲームだが、国王や魔術師、傭兵などのキャラクター、それに宮殿や宿屋など建物の絵が、いかにも雰囲気のあるアニメタッチになっている。
 でも、絵ばかりきれいで、内容が空疎なゲームはこれまでにも多かった。
 だまされないぞ、と思って遊んでみると、これがゲーム好きな人にはぴったりのオモシロゲーム。
 それもそのはず、この作品、『ラ・チッタ』と並んで、今年のドイツゲーム大賞の有力候補作となったくらい、評価されているのだ。
 おっと、タイトルを書くのを忘れていた。日本では『操り人形』と訳されているが、もとのフランス題名は『砦(CITADEL)』。これがドイツ版になって『恥も外聞もなく……(OHNE FURHT UND ADEL)』になった。妙な題名だなと思った人、実はこれ中世騎士のモットー『恥じることなき勇敢な……』のもじりという凝りよう。
 フランス題名ではおとなしいし、ドイツ題名ではすわりが悪いので、やっぱり『操り人形』ということにしておこう。
 ゲームの目的は簡単だ。先に8枚の建物カードを誰かが建てると、そこでストップ。上がり点と建物カードの価値点と、建物の各色揃え点などを合計して、いちばん多かった人が勝ち、というもの。
 問題は建物カードの増やし方だけど……一言でいうと、“複雑なじゃんけん”かな。
 プレイヤーは(6〜7人がいい)は、この中世社会で、各ラウンド、8つのキャラクターの中から、どれかを選ぶ。暗殺者や盗賊、国王や魔術師、というものだ。それぞれに特徴と有利な点があるので、他のキャラクターを選んだプレイヤーはそうした利点をなんとか消そうとする。それを見越して、他のプレイヤーは、また別のキャラクターを選んで……といった感じ。
 そう、各ラウンドでのキャラクターの選択、これこそがこのゲームの肝だろう。
 各キャラクターがプレイを行う順番は決まっている。最初が暗殺者で、誰かの役割の手番をとばしてしまう。2番目は盗賊で、これは誰かのキャラクターのお金を盗んでしまう。この1、2番と最後の8番目の傭兵が、いわば邪魔をするタイプ。傭兵は誰かが建てた建物を1つ、お金を払って破壊してしまうのだ。
 3番目の魔術師は便利屋で、建物カードを交換できるのが有利な点。これは7番目の建築家も同じで、こちらは建物カードの補充と、複数の建物の建築が可能。
 4番目からの国王、僧侶、商人が、いわゆる拡大権力型だ。国王はキャラクターカードの選択が真っ先、僧侶は建物を破壊されない、商人はお金が手に入りやすい、という利点がある。
 それぞれのプレイヤーは、自分のキャラクターの順番になると、それぞれの特徴を使い、あとは、お金か建物カードを手に入れ、そして、お金を使って建物を建てるだけ。
 これだけだと、なんだかわかったような気もするが、実際のおもしろさまでは伝わらないだろう。実は、このキャラクター選択のときに、キャラクターカードが最初に1つ伏せられる(選ばれない)のだ。
 そして、前ラウンドで決まった国王から左回りに新たなキャラクターを選んでいく。国王だけは伏せられたカードが何か知っている。でも、残りで何がどう選ばれるかは推測しかない。逆に途中からは、それまで選ばれたキャラクターは推測するしかないが、残ったキャラクターカードからどう選ばれるかは絞れていく。
 この辺りの微妙な“読みあい”が、ゲーム好きにはたまらない。例えば、それまで建物カードをたくさん建てているプレイヤーは、きっと僧侶を選ぶだろう。傭兵に建物を壊されるのが嫌だからだ。だが、おそらくそれは誰かが暗殺者になって、僧侶の手番をとばしてくれるはず。だから、自分はここにある魔術師を選ぶべきだろうか。というのは、建物の数が2番手のプレイヤーはきっと建築家を選んで、一気に複数の建物を建てて逆転を狙ってくるだろうから。魔術師となって、自分の手札0と相手の多くの手札を交換してしまうのだ……いや、それより、この盗賊を選んで、そのプレイヤーのお金を取り上げる方がいいのか?
 こうした思惑が、いざ蓋を開けてみると、当たっていたり、外れていたりで、非常に波乱にとんだ展開になる。
 とにかく、こぶりなカードゲームながら、1回遊ぶと、もう1回、さらにもう1回と、しばらく続けたくなる魅力が一杯だ。フランスにもこれからは注目だね。