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タイトルを見て、‘2人用ゲームが流行ってる? そんなのわかってるよ。マジックとかモンコレとか、TCGのことだろ?’と思った人−−少しちがうんだな、これが。
先月に引き続きドイツゲーム最新作の話になるが、同じ2人用でも、ここで言いたいのはTCGとちがって、普通のボードやカードゲームのこと。
でも、普通といっても、日本の将棋や囲碁みたいなものともちがう。
ええい、まだるっこしい、つまり昔流行ったウォーゲームみたいなもんかい!−−この答えも外れ。
要は、カードやボードを工夫した、いろんなタイプの簡単でおもしろいゲーム−−これまで書いてきた、まさしくドイツゲームと呼べるタイプ−−が、2人用でもどんどん出ているのだ。
実は、ドイツゲームの場合、こうした2人用は意外に盲点だった。
もともとドイツでは思考ゲームが好まれていたから、将棋や囲碁タイプの2人用ゲーム(アブストラクト・ゲームという)は、20年ほど前にはよく出ていた。
ところが、それとまったく異質のものが近年発展してきた。子供用ゲームに、こうした大人のゲームのおもしろさを移植し、かつ、わかりやすくユーモアに満ちたもの。さらに言うと、そこにかつて黄金期だった英米のボードゲームのおもしろさを吸収させたもの−−それが、ここでずっと強調しているドイツゲームだ。
これらは基本がファミリーゲーム、つまり通常は4〜5人で遊ぶ。逆にいうと、2人用は古めかしいと、放置されていた感なきにしもあらずだった。
それが、このところブームのTCGに刺激されたわけでもないだろうが、‘おお、そういえば、2人用ゲームもあったじゃないか’とばかりに、ドイツでもこのタイプがつぎつぎと登場しだしたのだ。
うがった見方をすれば、いまやアナログゲームではどうみてもチャンピオンといえるドイツだから、それならアメリカのTCGに対抗できるような2人用ゲームを作ってやる、というような意識すらあるのかもしれない(断っておくけど、ドイツでもマジックなどのTCGは売れている。でも、それ以上にボード/カードゲームが盛んなわけ)。
こうしたタイプの草分けは、日本でもおなじみ『カタンの開拓者たち』を作ったクラウス・トイバーによる『カタン・カードゲーム(CATAN
KARTENSPIEL)』。
ボードゲームの『カタン』とちがって、ここでは四角いカードを並べていって、開拓地や街の発展を競う。もともとは、人気のあったボードの『カタン』を人数が足りないときに2人でも遊べるようにしたい、という考え方があったのかもしれない。
ところが、才能あるデザイナー、トイバーの手にかかると、このゲーム、本来のカタンとはまたちがうおもしろさがにじみでていた。これまでの思考タイプのものとちがって、カードだと引きの運がからむ。と同時に、すぐに手番が回ってくるから、その時々の相手と自分を見比べながら、いろいろ戦略を練れる。
まあ、これはTCG の楽しみと基本は同じなんだけど、そこからの発展がちがった。TCG(つまり、カードを集める)に向かうのじゃなく、これまでの多人数ドイツゲームの特徴(いろんなタイプのゲームにする)を、この2人用にも取り込めるのじゃないかと、みんな考え出したのだ。
そして、ドイツゲームの特徴といえば、こうした、わかりやすくておもしろい、種類がさまざま、の他に、短時間ですぐに遊べる、という点もある。
TCGもゲームは短時間ですむが、熱中しはじめると、準備にいろいろ凝らないとおもしろくない。どんなカードを組み込んで、どんな戦略でいくか、一晩中考え込むことなどざらだ。
ドイツの2人用ゲームではそんなことはない。すぐにルールを読んで、すぐに始められ、すぐに終わる。それでもおもしろいものは、何度でも繰り返して遊べる。もし、飽きても、次から次へと新作が出ているから、今度は別なものを試せばいい。
この辺りは、どんどん縦に掘っていく(カードを買い集める)TCGと、つぎつぎ横に広がる(新しいゲームを試す)ドイツゲームのちがいが、はっきり見てとれるようでおもしろい。
ということで、次に登場した『シーザーとクレオパトラ(CAESAR & CLEOPATRA)』というゲームが、この2人用分野をさらに確固としたものにした。
これはシーザー側とクレオパトラ側にわかれて、どちらが人材のポイントで上回れるかを競うもの。裏切りや引き抜きみたいなカードがあって、それで人材をどう集めるかがキーポイントになる。
でも、ドイツゲームは、こうした題材でもあまりシミュレーション性(つまり、らしさ、ということ)は高くない。このゲームでも魅力的なのは、やっぱりゲームシステムの見通しのよさで、引いたカードを眺めながら、‘ここはこうやって、つぎはこうしよう’と戦略が立てやすいこと。膨大なデータを頭に入れておいて、丁々発止でやりあうといった、TCGに見られるような細かいシビアさはない。
この2つのゲームが基本となって、それからも続々と興味深い2人用ゲームが登場してきている。
でも、ここまでの説明を読んで、‘ホントに、そんなにおもしろいのかなあ’と、思った人もいるかもしれない。実は、何を隠そうぼく自身、つい最近まではちょっとそう思っていた。やっぱり、2人用だとTCGがおもしろいからなあ。ドイツゲームの場合は、まあ、楽しめるけど、熱中度はどうかな、というのが、いつわらざる感想だった。
ところが、である。
今年のエッセンのゲーム祭で出た2人用のゲームに、こうした感触をくつがえす見事なものがあったのだ。
こいつは、まちがいなくおもしろい。
そこで、ぼくは考え方を改めた。要は、やっぱりゲームを作るデザイナーの才能しだいなんだな、と。TCGとドイツの2人用ゲーム、どちらがおもしろいときめつけられるものではない。それぞれに、いいゲームがあるのだ。
この作品、タイトルは『バベル(BABEL)』。作ったのは、ウーヴェ・ローゼンベルクという人。この人、『ボーナンザ(BOHNANZA)』というやはりカードゲームで突如として3年前に登場し、独創的と評判になったデザイナーだ。
『バベル』も、一見したところは派手じゃないが、遊びはじめるとおもしろい。妙にやみつきになる。
立て続けに10回くらい遊んでみて、どこがおもしろいのかつかめた。
これは、すごく攻撃的なゲームなのだ。
ゲームは普通、防御的な面を少し強めに作ってある。すぐに、あっけなく終わってしまわないための措置だ。
でも、これが往々にして、慎重なプレイヤーが防御ばかり固めて、ゲームが遅々として進まず、かったるいという印象をもたれる原因になったりする。
ここでは、それを大胆に変えてある。
ゲームの説明はちょっとしづらい。簡単にいうと、手札の人員カードを場に出して、バベルのような塔カード(場にめくられている)を、ボードの5ヵ所で合計15階分先に建てたプレイヤーの勝ち。
建て方とか、人員カードの並べ方で、いろんな作戦がとれる。でも、キーになるのは、いかに自分の手番のときに、そうしたカードを組み合わせて、やりたいことをやりまくってしまうか、ということ。もし、それで勝利点に届かなければ、今度は相手の手番になって、されたい放題になるわけだ。
こちらには、対抗できる手立てはほとんどない。それも考えに入れて、前の自分の手番のときに、どのくらい‘勝手にされてもいいか’を考える。あるいは、勝手をされるまえに、自分が勝利点に届きそうなら、なんとか先にそうしてしまおうとする。
取ったり取られたりのサイクルの中で、いかに自分の手番のときに、15階分(すなわち15点)という勝利点に達するか、が重要なのだ。
荒っぽいゲームに見えるかもしれないが、むしろ考えて作り込んであって、シーソーの逆転のようなことがよく起こる。自分がやるだけやって、あと1階分(1点)足りない、なんてのは最悪なんだけど、これがよく起こる。そうなりそうなときは、先に相手の塔を何階かつぶしておいて、次のチャンスを狙う方がいい。それだと、つぶしあいでゲーム時間が長引くんじゃないかと思われるけれど、そこもよく考えてあって、たとえ敵につぶされても、塔の復興はわりと簡単なのだ。
また、人員カードを引けるだけ引いて持っておいて、一気に自分の手番にばたばた出して塔を立てよう、なんて作戦を考えるゲーマーもいるかと思う。だけどこれも、先にカードを出されていると、自分の手札を半減されたりするので善し悪しだ。
かくして、‘やった、いただき!’とか‘ああ、あと1階だったのに……’とか、悲鳴や喚声が交錯する。
TCGのコンボのおもしろさを取り込んだような、傑作カードゲームといえるだろう。
ローゼンベルクには新作がもう1点あって、これもなかなかだ。
さっきも書いた『ボーナンザ』の2人用バージョンで、タイトルは『豆カポネ(AL CABOHNE)』。
まあ、『ボーナンザ』を楽しめる人向けかもしれないが、ゲームそのもののアイデアはかなりのもの。
これは2人用だけれど、そこにゲームの上で3人目(アル・カボーネ)と4人目(ドン・コルレボーネ)のプレイヤーがいることとして遊ぶ。ちなみに、このボーネというのは豆の名前のだじゃれ。ゲームをギャングものに模してあるという設定。
『ボーナンザ』というのは、自分の豆畑に豆カードを出して、それを収穫して点数にしていくゲームなんだけど、この『豆カポネ』でも基本は同じ。
ただし、このギャングたちが集めている豆を引いてしまうと、それは彼らのものとなる。そして、ギャングたちは豆が集まると自動的に収穫していくので、どんどん点数がたまる。
本来、2人用なので、自分と相手とどちらが収穫豆の点数が高いかを競うゲームなのに、ここではギャングたちにも勝たないといけないという悩ましさが生まれるのだ。
プレイヤー2人がお互いに足を引っ張り合っていると、ギャングたちが勝ってしまう。かといって、2人のお互いの利益を考えて、と思っても、それぞれはどこかで自分だけがうまくいくようにと狙うはず。
この辺りのジレンマがたまらない。
それと、このゲーム、序盤はギャングたちがどんどん点数を伸ばしがち。とても追いつけないやと思っていても、あら不思議、よく考えて遊んでいると、最後には僅差でプレイヤー2人のうちのどちらかが勝つということがよくある。この辺りのゲームバランスの妙は見事としかいうほかない。
アイデアに優れ、バランスをうまく取る。すぐれたゲームデザインというのは、まさにこれにつきると、うならされた逸品だ。
ウーヴェ・ローゼンベルク−−この人は、ことカードゲームになるとすごい。TCGじゃない2人用ゲームってどんなの、というみなさんは一度お試しを。
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