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2◎遺跡発掘の楽しみ、極まれり テキスト/安田 均 |
| ゲームは寒い時に遊ぶのが楽しい――からかどうか知らないが、秋から冬にかけて新作が多いのは確かだ。もちろん、クリスマスや新年向けのセールスもあるのだろう。 ボードゲームにしても同じで、毎年ドイツでは、10月のエッセン・ゲーム祭(Siel)から、2月に開かれるニュルンベルク国際おもちゃゲーム見本市の頃にかけてが、新作の旬となる。 以前にエッセンのゲーム祭がすごい、と書いたけれど、ニュルンベルクの見本市はそれにも増して規模は大きい。もっとも、こちらは完全なビジネス中心の見本市で、関係者しか入場できないし、その場でゲームを買ったりもできない。 今年はぼくは参加しなかったのだけれど、行ってきた人によると、相変わらずの新作ラッシュらしい。 とにかく、エッセンで50を超える新作がリリースされてから半年も経たないうちに、またまたそれ以上の新作がニュルンベルクでお目見えしている。 こちらもおもしろいからつぎつぎ遊んではいるけれど、よくもまあ、これだけ、というくらいにアイデアが湧き出してくるものだ。 でも、これだけボードゲームも数が多くなると、なにかその年の“流行り”みたいなものも見えてくるようでおもしろい。 少し前には、都市建設タイプのゲームがいくつか同時に出ていた。街の土地区画がボードに描かれていて、そこにどう建物を建てていくかを競う、というもの。この手のゲームでは『メトロポリス』というクラシックがすでにあるけれど、なぜかそれに似た作品が3つ、4つも同時に出現したのには意外な気がしたものだ。 アイデアの争奪戦でも行なわれているのだろうか? 今年、つまり、去年の秋からこの春にかけても、不思議な現象が起きている。 なぜか、水の都ヴェニスを舞台にしたゲームが、3つも4つも出ているのだ。 まず、『ドージェ(DOGE/ヴェニス総督)』という、すばらしく美しいマップと、シャンプーハットみたいな帽子をかぶせたコマに特徴のあるゲームが出た。ゲームはヴェニスの6つの地域に、自分のコマをどう置いて影響力をもつかという、オーソドックスな造り。なかなか渋いゲームデザインだったので、ぼくは好感をもった。 ところが、つい最近、今度は『サン・マルコ(SAN MARCO)』という、同じくヴェニスを舞台にした作品が登場した。こちらは大手のラベンズバーガー社の製品で、作者も『エルフェンランド』でおなじみのアラン・ムーン。 おやおや、どういう偶然か、と遊んでみてびっくり。こちらも美しい街のマップは同じで(もっと童話風の絵だ)、やはり6つの地域で、自分のコマをどう置いて影響力をもつかを競い合うもの。『ドージェ』と違い、ヴェニスらしく橋をかけたりするところはあるものの、やはり帽子をかぶった総督コマがあったりして、雰囲気がそっくりなのは驚いた。 まあ、アラン・ムーンの名誉のために言っておくと、ゲームのデザインは細かいところではかなり違う。でも、何というか、感覚的にはそっくりなのだ。 ありゃと思っていると、もうすぐ出る、これも大手のゲーム会社のタイトルのひとつがそのものずばりの『ヴェニス(VENEZIA)』! こちらも区分けされた地域を利用したゲームだという。 その他にも、ヴェニスを舞台にしたクラシックといえる『インコグニト(INKOGNITO)』というゲームもリメイクされるらしい。 いったいどうなってるんだ?! ドイツじゃヴェニス観光のブームでも起きてるのかな。 こうしたアイデアの相似が起こってくるのも、分野が大きくなってきたときにはよくあること。 でも、ゲームは‘アイデアこそ命’と思えるので、あんまり感心したことではないだろう。 逆に、思いもかけないところから、これまでにないアイデアのゲームが出現すること、こいつは嬉しい。 去年のエッセンでは1つ、おもしろいゲームがあった。 会場をうろついていると、見たこともないメーカーがやけにきれいな装丁のゲームを出品している。ゲームは不思議なもので、小さな会社の製品は、見栄えがきれいなものほどおもしろさはもう一つということが多い。でも、そのブースではきちんとした身なりの人たちが、美しいボードに紙のコマを散らしてなにやら必死に考え込んでいた。まあ、おそらくパズルめいたゲームだろうと思って、そのときはさして気にもせず、買うだけ買って日本に帰ってから遊んでみた。 題名は『トロヤ(TROIA)』。 これが奇妙なゲームなのだ。 テーマはギリシャのトロヤの数千年にわたる遺跡を発掘するというもの。 こう書くと、‘遺跡のコマを表返して、それで遺跡を組み立てていくゲームかな’くらいの推測はつくだろう。 ところが、このゲーム、その表返し方――つまり、発掘――が変わっていて、まずそれに目がいく。 最初に、80枚ものコマを裏にして、ボードにランダムに積み重ねる。いや、ランダムそのものではなく、5期にわたるトロヤの歴史遺跡のコマを、古い断片から順に数十ずつどんどん上にばらまいていくのだ。 そして、プレイヤーはまずこれを、注意深くかき集めてこなければならない。もちろん、そこには手先の器用さも少しは要求される。 下にある歴史の古い遺跡の断片を、なんとか先に引きだそうとして、コマの山を崩してはいけないのだ。 一言でいうと、将棋の“山崩し”そのもの。 そう、実際の発掘とは異なるだろうが、このゲームは遺跡を発掘し、それを再現する楽しみを、こうした形で表わそうとしていたのだ! 遺跡コマは表裏の両面印刷で、遺跡周辺の地形が模様のように描いてある。遺跡があるコマは、裏にくっきりとその部分が浮き出しているのだが、もちろん何もないハズレコマも多い。 これらを裏返しのまま慎重に引いてきて表返し、遺跡があると、今度はそれがどの時代でどうつながっているかを考える。 時代は5期で、それぞれ駒が4×4の正方形にはまるようになっている。 もっとも、遺跡の断片だから、つながり具合によってはばらばらで、これはここ、あれはあそこ、とパズルのように考えなければならないが、これもまた楽しい。当然、同じ時代の遺跡をつないで、完成するように置くと高得点になる。 遺跡コマの時代自体は、片隅にマークがついているのではっきりわかる。だけど、コマの山のかさなり具合によっては、それがどうかははっきりしないことも多く、どのコマを引いてくるのかの綾があっておもしろい。この辺りは、まさしく将棋の“山崩し”の楽しさだ。 最初のうちは遺跡の模様をパターン認識することがちょっと辛くて、‘発想はすばらしいけれど、しんどいゲームじゃないかな’と思った。だけど1、2回遊ぶと、すぐにそうしたものは慣れてくるので、俄然ゲームとしてもおもしろくなる。 とにかく最初、手先の器用さや推測を必要とするゲームの特徴が、断片が集り出すと、今度はパズルゲームみたいなものに変わる、その変化がいい。 そして、ジグソーパズルにも似て、遺跡が完成していく快感。これこそ、まさに遺跡発掘ゲームというべきものじゃないか、と思ってしまった。 こんな装丁も立派、アイデアも抜群のゲームがひょこっと飛び出してくるから、いまのドイツゲームはおそろしい。 でも、ぼくはちょっぴり心配していた。 いいゲームなのは確かなんだけれど、小さな会社の製品だから、あまり注目されないのじゃないだろうか、という点だ。これまでアメリカなんかでは、そうして埋もれていった作品も多い。 ところが、ところが。 今回のニュルンベルクの見本市では、なんと大手のアミーゴ社が半年も経たないうちに、この作品を新たにリメイクして出すそうだ。 いや、まったく目をつけるのが早いというか、何というか。 それだけ、いまのドイツのボードゲームは、エッセンのゲーム祭やニュルンベルク見本市がマーケットとして機能しているというべきかもしれない。 いずれにしても、おもしろい発想のゲームが広がることは、ますますゲーム界を活発にしてくれる。 ひょっとして1年ほど経つと、今度は“発掘ゲーム”が流行りになってたりしたらおもしろいだろうな。 でも、ニセものを自分で埋めちゃ、ダメだよ。 |