ROUND 3◎インチキポーカーは楽しいぞ!
テキスト/安田 均
 つい先頃、JGC(ジャパン・ゲーム・コンベンション)ウエストから帰ってきた。JGCというのは、RPGやTCG、それにボードゲームなど、コンピュータゲーム以外のアナログゲーム全般を遊べる催し。
 これまでは毎年、夏に東京で開催されていたが、好評につき、今年は春に大阪(つまりウエスト)でも開こうとなったもの。1泊2日でのべ1000人を超す人たちが、夜通し思い思いのゲームを楽しんだり、新製品を購入したり、トークショーを楽しんだりした。
 もっとも、開催側であるこちらは、ゲームにかかわれても、実際には自由に遊べないという辛いところもある。次から次へと、挨拶やデモプレイ、司会、あるいは、サイン会――いや、サインするだけならいいが、そのついでに、物販スペースで売り子までやっている――という案配。
 といいつつも、根っからゲームが好きなので、ゲームを楽しんでもらえる人たちの顔を見ているだけでも嬉しい、というのが偽らざる心境でもある。
 そういうことをしているから、午前3時にはやっと自由な身となれたものの、声の調子がおかしい。この日のために、昼間はデモをするだけで我慢していたボードゲーム『エルフェンランド』(初心者向けで1時間程度で終わる)の、元バージョン『エルフェンゴールド』(こちらは3時間はたっぷりと、駆け引きが楽しめるゲーム)をさあ遊ぼうと思ったけれど、ここで突っ走ると翌日が不安だ。泣く泣く部屋に寝に戻ったのだが、結果は正解。
 翌日は朝から声がガラガラ。なんとかモンコレのトーナメントで挨拶はできたものの、あのまま遊んでいたら、たぶん死にかけた鵞鳥のような声だったと思う。
 ということで、ここでは『エルフェンゴールド』以外にも、JGCウエストに持っていって遊べなかったゲームをひとつ紹介してみよう。
 これは、いつものようにボードゲームじゃない。
 今回はトレーディング・カードゲーム(TCG)だ。
 TCGはマジック・ザ・ギャリングをはじめ、いまは日本でもモンコレなどいろいろ出ている。
 でも、数年前は海外の作品がもっぱらで、『スターウォーズ』や『指輪物語』など、いくつか日本で翻訳されて出ていた。ところが、日本の作品が出るようになってからは、全然翻訳されなくなったんだね。
 向こうじゃ出てないわけではなく、以前より数は減ったけれど、依然おもしろいものはぽつぽつと現われている。
 中でも、快作と呼ぶにふさわしいのが、これ――ホラー西部劇を扱った『ドゥームタウン』だ。
 最初に出たのは3年ほど前だけれど、そのときも話題になって、以来順調にシリーズが出されてきた。
 去年から今年にかけて新版(ブートヒル版)が出たので遊び直してみたが、やっぱりおもしろい。これまでに、どこにも紹介されていないので、ちょっと詳しくどんなゲームか説明してみよう。
 背景は19世紀のアメリカ西部。とはいっても、普通の西部劇ではない。カルチャーとしてはほとんどそのままだが、カリフォルニアなどは大規模な地殻変動を起こし、あやしい化け物が跳梁跋扈しているというホラー風味でもある。
 化け物は主に死の世界とつながっているハロウと呼ばれるものと、突然変異風のアボミネーションと呼ばれるものの2つがある。
 そして、もちろんここでは魔法も通用する。これにも3種類あって、手品や超能力風のハックスター魔法、牧師などの奇跡を連想させるミラクル魔法、そして、原住民が伝統として持っているシャーマン魔法だ。
 こう書いてくると、なんだか普通のTCGよりも背景世界が豊かで、RPGを思い浮べた人も多いだろう。その通り、『ドゥームタウン』にはもともと『デッドランド』というRPGがあって、そこから派生したTCGでもあるのだ。
 でも、ぼくはRPGの方(『デッドランド』)はおもしろいけれど、いかにもRPGの1ジャンルの作品というイメージがあって、むしろ、こいつはスゲえや、と驚いたのは、このTCG(『ドゥームタウン』)の方なのだ。普通は原形の方が評価されて、後から出てきた派生作品はそんなに評価されないのだけれど、これだけは逆といってもいいくらいユニークな存在でもある。
 まずそのキモから説明してみよう。
 このゲーム、重要な局面で使うのは、通常のTCGのように、カードのデータやサイコロではない。
 なんとポーカーなのである。
 カードには、いかにもそれらしいイラストとデータがあるけれども、それと同時に、すべてのカードにトランプのマークがついている。そう、スペードのエース、とかダイアモンドの4、というようにである。
 そして、52枚のデックをそれぞれが造る。
 ゲーム自体は、プレイヤー各々が、このデッドランド世界での組織の一員となって、支配ポイントで相手の影響ポイントを上回れば勝ち、というもの。
 支配ポイントはいわば地形で、街なら酒場とかタウンホールにそれぞれ付属している。街の外なら、鉱山だ。ここにキャラクターを送り込んで支配に成功すれば、支配ポイントが手にいる。
 影響ポイントというのは、たいていキャラクターについている。だいたい強いキャラクターほど影響ポイントは大きいというわけ。
 こう書くと、ゲームの進行はほぼ見当がつくだろう。
 自分の手番にキャラクターや地形を手札から降ろして、それまでにいる味方のキャラクターと一緒になって、自分の地形や敵の支配している地形を襲い、その支配を狙う、というスタイルだ。
 とにかく敵のキャラクターを倒していけば、敵の影響ポイントは減るし、自分は地形を支配しやすくなって、支配ポイントが増える。つまり、勝ちやすくなる。
 で、敵のキャラクターと出会うと、ウエスタンではお決まりの撃ち合いとなる。
 この撃ち合いの判定を、なんとこれまた西部劇にはつきもののポーカー勝負で決めようというゲームなのだ。
 山札からこれまでの手順とは別に、カードを引いて、そこから5枚出して優劣を競う。おなじみのポーカーだ。
 ポーカーというと、日本では5枚引いたうちから何枚か交換して役を作っていくドロウポーカーしか知られていないが、ここでは本場らしく5枚以上引いて、そこから5枚選ぶスタッドポーカーも含まれている。
 2種類を一度にどうして遊ぶかというと、キャラクターにドロウ値もしくはスタッド値が書いてあるので、その合計で考える。
 要するに、強いキャラクターがいたり、キャラクターが何人もいると、ドロウ+スタッドが可能で、5枚以上引いて何枚か交換し、そこから5枚を選ぶという方法が取れるので、随分有利だ。
 さて、手札の公開。
 おお、フルハウスがいるぞ、それに対して、相手は――
 何と、フォアカード。
 むっ、そのフォアカードは何だ?! スペードのエースが3枚も入ってるじゃないか!
 その通り。これはTCGであり、好き勝手にデックを組むことができる。だから、自分の好きなカードを選んでいたら、52枚中に何枚もトランプとしては同じカードが重なってくるのだ。そんな組み方でも、もちろんオーケー。
 このゲームシステムを知ったときには、愕然とした。
 インチキポーカーができるTCG?
 いや、それどころじゃない。‘できる’ではなくて、‘そうする場合が大半’という、とんでもなくラディカルなコンセプトで作ってあるのだ。
 もちろん、それだけならゲームにならないので、カードの中には‘インチキなポーカーの組み合わせを出したときには、〜の被害を与える’というデータを持つカードも多い。
 これがあるので、ゲームは(特にポーカー判定のさいには)めちゃくちゃ白熱する。
‘ここはインチキな手を作ってでも相手を上回るか’それとも‘インチキを相手に作らせて、その発見カードで相手に逆襲するか’ ――ポーカーそのものの駆け引きが存在する上に、インチキをするかどうかの駆け引きまで存在するのだ。
 いやあ、スゴいゲームですねえ。
 センス・オブ・ワンダーが2種類存在する。TCGで通常の判定のさいに別種のゲームを使うという発想が1つ。さらに、それを超えたところで、いかにもTCG風の自由にカードを組み替える手法で、インチキをするか、見破るかの、駆け引きを付け加えたことが1つ。
 そして、なにより大事なのは、そうしたとんでもないアイデアが(アイデア倒れじゃなく)見事にゲームとして機能するのだ。
 それにしても、アメリカ人はポーカーが好きだねえ。ここは日本ではひとつ、花札を使ったおもしろいゲームでも考えてみますか?