ROUND 4◎オージーはゲーム三昧なのか?
テキスト/安田 均
 ゲームには、それぞれの国で特徴がある。
 わかりやすくいうと、日本ではゲームというとコンピュータゲーム、それもいわゆるゲーム機を使うコンシューマゲームをさす場合が多い。でも、ここでも何度か書いているように、ゲームはコンピュータだけではない。その国で、どのタイプのゲームが、いちばん目立っているか、という点ではさまざまだ。
 ドイツでは、もちろんボードゲーム。しかし、ここでもコンピュータゲームは盛んだし、TCGやRPGも多い。
 アメリカは一概にはいえないが、これまで独創的なゲームをつぎつぎと作りだし、それが目立ってきた。ボードゲームではモノポリー、そして、シミュレーション・ウォーゲームやRPG、いまなら、やはりTCGとコンピュータのネットゲームだろう。
 なら、他の国はどうだろう?
 という理由からではないけれど、つい先日、オーストラリアに行ってきた。
 オーストラリアと聞くと、広々とした国というイメージだし、オリンピックなどでも水泳や陸上が強く、ほとんどアウトドア指向。ここで書いているようなゲームは少ないんじゃないか、と思われるかもしれない。
 ぼくも最初はそう思っていて、ネット通販でボードゲームを売っている会社をメルボルンの郊外で訪ねようとしてみた。ところが、その住所はいわゆる私書箱で、店を開いたりはしていないらしい。
 ああ、まだまだオーストラリアじゃ、ゲームは広がってないのだなあ、と思いつつ、市内に戻ってみてびっくり。メルボルンの繁華街のど真ん中に、立派なゲーム専門店があるではないか。
 中に入ってみると、まずマジック・ザ・ギャザリングなどTCG関係と、それにRPGなど書籍もたくさん並んでいる。この辺りは日本のアナログゲーム専門店と似たような造りだ。違うのは、店舗が広くて、充分に見て回れるスペースのあること。さすがに国土の広い国は違う。おもしろいのは、パソコンゲームもかなり置いてあって、『エイジ・オブ・エンパイアII』などシミュレーションゲームも多かった。
 よく見ると、2階への階段がある。上は何かと聞いてみると、どうやらプレイスペースらしい。
 ああ、日本のようにTCGを遊ぶところか、と思って行くと、これがまったくの外れ。そこは、イギリスで大人気の『ウォーハンマー』をメインとした、ミニチュアゲームを展示して遊べるようにしてあったのだ。もちろん、スペースはたっぷりで、いろとりどりのミニチュアが並ぶのはなかなか壮観。なんなら、そこで別のRPGやTCGを遊んでもいいという。そして、週末ともなるといろんなファンが集ってきて、にぎやかなコンベンション会場にもなるらしい。
 おお、すばらしい、でも、ボードゲームが一つもないのは残念だ。やっぱりファン層が違うのかな、と思って‘ボードゲームを売ってるような店はないのか?’と聞くと、‘何言ってる。隣にうちの別の店があって、そこが専門さ’と意外そうな顔をされた。外に出ると、言われたとおり。2軒先に同じような店があり、いわゆるボードゲームが花ざかり。輸入されたドイツゲームがずらっと並んでいれば、逆側には、モノポリーをはじめ、英米で定番のゲームも数多い。もちろん、トランプや、ルーレットなど一般ゲームも揃っている。
 なんだ、ここに全部揃っているじゃないか。ボードゲームの店なんてメルボルン市内の繁華街にないだろうと、先に郊外に行った自分が馬鹿みたいに思えてきた。
 そう、外国じゃ、こっちの方が普通なのだ。
 あとで行ったシドニーも状況は同じ。ダウンタウンにあるヒルトン・ホテルへの道すがら、タクシーからゲーム専門店が見えたので、チェックインしてすぐに行ってみる。
 やはり、TCG、RPG、ドイツや英米のボードゲームなどがずらりと並ぶ新しくて大きな店だったのは一緒だが、何とここでも2軒隣に、同じようにアナログゲームの店が開いているではないか。しかも、今度は店名が違う。
 こちらは、内容が同じでも、やや古めのゲームを置いてある。察するに、この店の方が古くからあって、先に行ったところはあとから開いたのだろう。
 こんな近くでアナログゲームの専門店が競合するような形であって、うまく行くのだろうか、と思ったのだが、なんとその通りの斜め向かいには、もっと専門的なシミュレーションやミニチュアのウォーゲーム関連の店があったのには仰天した。
 ここはアナログゲーム・ストリートかい?!
 まだある。極めつけは、ホテルに戻って、地下のホテルアーケードに行くと、ファッション性豊かな店並びの中に、なんと『ウォーハンマー』を出しているゲームズ・ワークショップの大きな店があるではないか。
 まあ、考えてみれば、オーストラリアはイギリス連邦の一員なのだから、イギリスでヒットしている『ウォーハンマー』の店があるのは納得できるけれど、それにしても、こんなにアナログゲームの店が見つかるとはねえ。
 何より、普通の書店でも大きなところになると、マジック、D&D、そして、ドイツゲームの有名どころ(カタンなど)、そして、一般ファミリーゲームは置いてあるのだ。
 で、コンピュータゲームはどうなのかというと、これはネットゲームが花ざかり。街のどこにでもいわゆるネット・サロンがあって、そこでオンラインゲームに興じる人たちの姿が多い。ゲーセンも普通にある。少ないのは、いわゆるファミコンショップみたいなもので、コンシューマゲームはトイザらスのようなところでしか買えないようだ。
 このように、お国柄でゲーム事情はかなり違う。日本でいう“ゲーム”を探すなら、オーストラリアは“ゲームがない”になってしまうし、逆に、オーストラリアから見れば、“日本にはゲームがない”になるだろう。ぼくから見れば、オーストラリアはゲーム三昧の天国になるんだけどね。
 そのオーストラリアで見つけたおもしろいボードゲームが2つ。
 ひとつは、『ドキドキわくわく相性チェックゲーム』の新版。
 このアメリカ製ゲーム、3年ほど前に日本でも翻訳されて、一部のゲーマーの間では‘おもしろい’と評判になっていたもの。
 でも、このすごいタイトル(原題はCOMPATIBILITY)と、出た数が少なかったせいか、すぐに絶版になってしまって、あとから聞いた人たちが買おうとしてもなかなか手に入らなかったものだ。
 それを、今度はオーストラリアのゲーム会社がリメイクしてくれたというのだから嬉しい(THE ALL NEW COMPATIBILITY/CROWN&ANDREWS)。
 ゲームは向い合ったパートナー同士が、その回のお題(‘コーヒー’など、毎回変わる)をイメージして、ピンときたカードを手札から何枚か並べ、いっせいに表返して一致したものを選ぶというもの。一致の枚数によって、パートナーチームの駒がボード上を進める数が決まり、早くゴールインしたチームが勝利する。
 今度の新版でも、基本のルールはほとんど同じ。目立って変わった点といえば、ボード上に印刷してある選べる手札の枚数が、少し規則正しくなったことくらいだろうか。
 もちろん、イメージの中心となる手札50枚は、新版ということで全部新しくなっている。
 このゲームの楽しくも悩ましいところは、イメージの合致を意識して狙うのか、自然にまかせるのか、という部分。そりゃ、相性がよくって、自然に合致するパートナーなら最高だが、そうでないならどちらかに合せていかないとゲームに勝つのは難しい。ところが、合せようとするのを自分の方にするのか、相手の方にするのかでも悩む。お互いに相手のことを考えて、今度はまたも不一致を起こすというのはよくあることだ。
 中には、必勝法をあみだすゲーマーもいて、いつもいつも同じカードの組合わせを出していれば、そのうちパートナーが気づいて、全部合致しだすんじゃないか、ということだった。でもこれは、はっきりいえば横紙破り。ルール上はまちがっていなくても、このゲームの基本である“コミュニケーションを試すのがおもしろい”という部分を拒絶している。
 この辺りは、“ゲームとは何か”という点とかかわるのでおもしろい論点だけど、幸い、この新版では気づいたのか、合致したカードは抜いていくという新しいルールも導入されていた。
 いずれにしても、連想コミュニケーションゲームとして非常によくできているので、買い逃している人にはチャンスだろう。こういうのをリメイクしてくれるオーストラリアは立派だねえ。
 もうひとつのボードゲームは、クラシックともいうべき『スクォッター(SQUATTER)』。
 出てから40年たっており、オーストラリアでは定番ともいうべきゲームだそうだ。
 でも、ボードを見たとたん、いかにものモノポリーに似た造りに、ちょっぴり悪い予感がした。ゲームとしては、プレイヤーが牧羊業者になって、羊の群を増やすというのがおもしろそうではあったけれど。
 プレイヤーは自分の番になると、サイコロを2個振って、ボードをぐるぐる回る。止まった場所の指示に従って羊を売り買いし、その儲けと、ボードを1周するごとに羊の数で収入が入り(毛刈りをするから)、それで最高(6000頭)まで羊を飼えれば勝ち、というもの。
 モノポリーと違って、他のプレイヤーから収入を得たり、取られたりはほとんどない。代わりに、羊の売り買いや、場所の指示をどう判断するかなどで選択の余地があり、その意味では多人数でソロゲームを行っているような感じがある。特に、強烈な指示のある場所が多かったり、カードのめくりで羊の価格が極端に上下するので、一発逆転のギャンブル風のおもしろさはある。
 ただ、ゲーム自体は、ちょっぴり古めかしいかな、という気がした。
 そこで、ソロゲーム風なのが特徴だから、選択の余地を増やそうと、1つだけルールを付け加えてみた。サイコロを2個振って進むだけ、というのを、1個振るか、2個振るかをプレイヤーが選べるようにしてみたのだ。
 こうすると、かなりゲームが変化して、おもしろくなった。
 たまたまかもしれないが、強烈な場所が多いのに、サイコロ2個で無理やり入ってしまう(サイコロまかせだ)と嘆いていたプレイヤーが、かなり真剣に考え出したのだ。サイコロ1個だとある場所を回避したり、狙えたりする可能性は多くなるが、ボード回りの進行が遅くなるので、毛刈りの収入は減る。その辺りの選択がおもしろくなったからだ。
 ゲーム時間も短くなる。
 考えてみれば、最近のドイツボードゲームもそうした選択の余地を増やすことで、ただのサイコロ頼みだったゲームが劇的に変化しているものが多い。
 こりゃ、ゲームの進化が目の当たりにわかるな、と思いながら、何度もこのオーストラリア産の羊飼いボードゲームを楽しんでしまった。
 こうしてみると、オーストラリアでは、まだまだアナログゲームは悠然と楽しまれているようだ。ギャンブルが好きだったり(カジノは解禁でどこにでもある)、対人コミュニケーションゲームが好まれる(ボードでちょっとHなゲームも人気があるみたいだ)、というお国柄もあるだろうが、ぼくにはかなり水が合う気がした。
 やっぱり広い国はいいですねえ。