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なにはともあれ、今年のドイツゲーム大賞が決定した。
ぼくの予想からすると、候補作段階で“波乱”があったけれど、決まってみるといくつか意義がある。
その“波乱”と思える点を、ちょっと説明してみよう。
まず、今年はいろいろとおもしろいゲームが出ていた。このところ、やや複雑な方向を向いていたドイツのボードゲームだが、その方向を推し進めるタイプと、そうではなく、従来にないタイプもいくつか出現しはじめたのだ。この2つが、ぶつかりあっている様相があった。
ところが、候補作の発表段階では、この新しい方向が思いもかけず、ばっさりと削られていて、ぼくなどはびっくりした。
ゲーム大賞はこれまで、大賞にはそれなりの思惑が感じられ、おやと思う場合もあったが、候補作にはいろいろとおもしろいものが取り入れられ、そのバラエティに感心してきたからだ。
それが、候補作段階から妙に保守的な感覚がある。
これではドイツゲームの将来は暗いんじゃないか?−−そう感じたのだ。
しかし、これが最終候補作3作に絞られたときから、あれあれ、と期待が湧いてきた。
最終候補に残りそうな“これまで”タイプが、こんどは見事に落ちて、意外に新鮮な顔ぶれになってきたからだ。
1つは、子供向けゲームとも思えるが、ユニークな番号選びのシステムが、とっても愉快な『ツァップ・ツェラップ』。
もう1つは、小型ゲームで箱もちょっとダサいが、とにかくすぐに遊べて楽しい『カルカソンヌ』。
そして、今回候補に3作も挙がったアラン・ムーンの作品の中では、いちばんの野心作と思える『アミュレット』。
これはひょっとしたら、と思っていたら大賞決定。
グランプリには、ついにこれまでにない小ぶりな作品『カルカソンヌ』が選ばれた!
そして同時に、これもとても大事なのだが、“特別賞”として、候補作段階では落ちた“これまでにない”タイプの作品が2つ、見事に選ばれている。
文学ゲーム賞(!)ということで、クニツィーアの『指輪の王』。
さらに、歴史ゲーム賞ということで、異色作『トロイ』。
おお、やった!!
なるほど、選考委員というのも大変なんだなあ、と改めて感じた。今年は候補作をちょっと保守的に偏らせたものの、実は本当に選びたかったのは、大賞をはじめ、特別賞など新鮮なタイプだったのだ。ゲーム大賞というのも、この頃は評判が高くなって、候補作に選ばれるだけでも売れ行きにかかわってくる。ということで、候補作段階ではゲームファンやゲーム会社への配慮があり、最後の方で、かれら選考委員の実質評価をしてみたかったのだろう。
受賞作のうち、『カルカソンヌ』はすぐあとに書くとして、『指輪の王』と『トロイ』には双手をあげて賛成。この欄でも、いいのかなあ、まだ誰も評価していないしな、とか、評価が真っ二つに分かれているぞ、と思いながらも、取り上げてきたかいがあった。やっぱり、紹介者というのは、きちんと先に作品を評価できていると、とても嬉しい。この2つの作品は、特異な点も多いので、あわない人もいるかもしれないが、ぜひ注目して遊んでみてほしい。ここから、また新たなゲームの流れが生まれてくるかもしれないのだから。
それはともかく、『カルカソンヌ』である。
タイトルはローマ時代からの南フランスの都市で、芸術と騎士の街で有名ということだが、ゲームとはあまり関係はない。
結論からいうとこのゲーム、どこがすごいかというと、2人から5人まで、すぐに遊べて、すぐに熱中できるユーザーフレンドリーなところだろう。
特にいいのは、意外にも、2〜3人のときにバランスが取れているという点。
何回か遊んでみたが、4〜5人になってくると、得点と地形の関係から、修道院が有利になってしまい(他と比べ邪魔がしにくい)、それを集中して引いたプレイヤーが勝ちやすいため、修道院を1、2枚抜いた方がうまくバランスが取れる。
逆に2〜3人用は、これまでのゲームがうんうんうなって、戦術を考えるタイプが多かったのに比べ、そのままでかなりさくさく進められて楽しい(手番のまわりが早いので、邪魔がされにくい)。ゲームの箱が小ぶりなことから考えて、この作品、少人数で楽しめるように考えてあるのだろう。
ゲームはホントに遊びやすい。でも、考えるべきところや、決断すべきところはそれなりに多いので、すぐに飽きるということもない。
基本はタイルめくりゲームだ。
四角いタイルには道や城、修道院が描いてあって、これをどうつないで自分の得点にしていくかを競う。これまでのそうした“タイルめくり接続”ゲームは、遊びやすい一方、飽きのくるのが早いものが多かった。その理由は、得点パターンを一元化してあるものが多く、タイルをいかに巧くつなぐか、あるいは、邪魔をするかしかなかったからだ。
このゲームはそうではなく、世界の広がりを楽しみながら、いかに巧く得点するかを考える。
得点はタイルにコマを置くことで表す。
これはすぐに得点できる場合が少なく、途中やゲームが終了しないと得点できないから、印という意味で使われる。このコマをどう置いていくかがおもしろい。
いい場所に置いておくと最後に高い得点が望めるが、プレイヤーはコマを7個までしか持てないので、途中で得点して回収し、また使うという回転を計った方が有利なことも多い。かといって、回転ばかりしていると、あとあとの得点へのコマの配置で遅れを取ってしまい、最後で大逆転ということも起こる。
地形はタイルめくりで決まってくるから、毎回変化があっておもしろい。この部分がないと、決まった地形へのコマ配置ゲームというよくあるパターンになってしまっていたことだろう。
とにかく、バランスのいいゲームだ。難しさという意味でのゲームバランスもいいが、それと同時に、つぎに何が来るのだろうというめくりの期待感と、めくったタイルの処理のスピードという、わくわく感や進行感のバランスもいい。
タイルは即配置し、コマの配置もそのときに決断するので、細かいことを考えなくてもいい。地形をどう置くか、コマを配置するかどうか、配置するならどこにするか(コマを置くのはめくったタイルに限定されている)、考えるのはこの3つだけというすばらしさ。
それでも、でき上がった“カルカソンヌ”の地形が最初に考えていたのとはかなり違って、得点結果が思いもかけない変化をするのはいつものことだ。
タイルめくり配置ゲームとかコマ配置ゲームというのは、いまでは山のように出ているが、これだけコンパクトにわくわく感を保ってバランスよく作られたというのは、確かに大いに評価すべきことだろう。
そして、楽しい2人用ゲームとしても優れている。
作者のクラウス=ユーゲン・ヴレーデはまったくの新人で、これからどんなゲームを作っていくのかもわからない。そうした点でも期待は充分だ。
ところで、いま書いていて気づいたが、前回書いた『アフリカ』も、この受賞作とよく似ている。タイルめくりと、得点パターンのおもしろさ、という点だ。違うのは、めくったタイルで毎回地形が変化することだろうか。確かに、その点では『カルカソンヌ』の方がおもしろい要素は多くなっている。
でも、『アフリカ』だって、候補作にはなるくらいのおもしろさを含んでいたのはまちがいない。
そうしたことから、ここで候補作に落ちたもう1つの、これまた“めくり”の大作についても触れておこう。これも、まちがいなくおもしろい作品だからだ。
それは『新エントデッカー』。
以前、出て人気のあった『エントデッカー』の新版だ。
内容は、未知の大海原に乗り出し、新しい大陸や世界を発見していこう、という気宇壮大なゲーム。もっとも、ゲーマーが遊ぶと、相手に巨大な大陸を占拠されると不利になるので、大きくなりそうな世界を小さく区切って、島だらけの世界になることもよくあった(笑)。
それでも巨大大陸は現れるときには現れるもので、しかも、それが全貌まで現さず、途中ですべてがわからないままゲームが終了することもよくあった。ぼくらはこれを“暗黒大陸”と呼んでいたが、そうしたいろんな局面の出てくる、とても楽しいゲームだ。作ったのが『カタンの開拓者たち』のクラウス・トイバーともなれば、まあ、それくらいおもしろいのも当然だとは思うけれど。
このゲームでも、大陸などが現れるのは、海に出てタイルをめくり、表返していくからだ。それが端のつながりやすい陸地であれば、どんどん大きくなるし、逆であれば、島になりやすい。
どんな世界だろうと、つぎつぎめくっていき、そこに植民者を送り込む。世界の形がわかって、それを占拠する競争に勝てば、得点が得られる。
今回の新版でも、その楽しさは健在だった。
もっとも、改良版ということで、ちょっとルールが増えて複雑にはなっている。以前はめくる行為がほとんどだったので、その運不運が云々されたこともあり、今回は、すでにわかっている地形を“買う”こともできるようになった(トイバークラスの巨匠ともなると、そうしたマニア層の意見を考慮しなくちゃならないとは、大変だと思う。『カルカソンヌ』なんかも、めくりの運不運が多いと思うんだけどね)。
でも、遊んでみると、やっぱり資金はそんなに豊富ではないので、ここ一番は、‘えいっ!’とめくっての悲喜こもごもがおもしろい。そもそもテーマが冒険ゲームなのに、どうして安全策ばかりを考えないといけないんだ?
かくして、1時間半ばかりがたつと、ほぼ世界の全貌がわかり、いかに世界を発見してそこに自分の旗をうまく建てた(植民者で占拠した)プレイヤーがだれかわかる。中には、植民者をうまく送り込んだうえ、原住民とも仲良くなって、現地の品物でかなり儲けるプレイヤーもいる。
こうしためくりのゲームの中では、もっとも味わい深く楽しめるのが、『新エントデッカー』ではないだろうか。
さて、今年ドイツではいろんなボードゲームの登場した年だった。結論としては“めくり”のゲームが目立っていたが、来年はどうなるのだろう。楽しみだね。
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