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毎年、この時期になると、ドイツ製のボードゲームはにぎやかになる。
だいたい製品が出るのが、秋から冬(クリスマス、新年)、そして、春が多いからなんだけど、それらが出そろって‘さあ、昨年度のおもしろかったゲームはなんだろう’という感じで、侃々諤々となるからだ。
そもそも、出る点数が半端じゃない。
つぎからつぎへとよくもまあと思い、ちょっと前に、ドイツでボード/カードゲームが年間どのくらい出ているのか、調べてみた。インターネットは便利なもので、ちゃんとこうしたデータベースも用意されている。それによれば、1992〜95年には、毎年300点を超える数だったと判明。
100は超えているだろうなとは思っていたが、こっちの認識が甘かった。
もちろん、この中には、ドイツ語に翻訳された英米製のゲームが含まれているから、純粋に‘ドイツ製’となると、少し減るけれど、それでも200前後あるのはまちがいないだろう。
そりゃ小説のある分野−−例えば、SF小説−−なんかと比べると、数では及ばないかもしれないが、あのかさばる箱型のアナログゲームがこれだけ出るとは、信じられない人も多いにちがいない。
おもしろいのは、これがドイツのお国事情であって、英米にそんなパワーはもうないし、他のヨーロッパ諸国では、まだまだ‘はあ、ボードゲームがどうしたの?’なのもまちがいない点だ。
当のドイツ人が‘おれたちゃ、どうしてこんなにボードゲームが好きなんだ?!’みたいな言い方をしてるくらいだから、なんだか可笑しい。
しかし、それだけ盛り上がっているというのも、事実。そのうち書こうと思うけれど、こうしたゲームのフェスティバル<エッセンのゲーム祭>や<ニュルンベルク国際おもちゃ見本市>は、10万人以上の規模で開催され、アメリカのゲーム大会<オリジン>や<ジェンコン>、あるいは<世界SF大会>などよりずっと大きい。
さて、その1999年度(1999年夏〜2000年春まで)のおもしろかった作品、どんなものがあるのかを知る便利なものさしがある。
それが‘ドイツゲーム大賞’。初夏のこの時期になると、毎年優秀作が発表されるのだ。これは名前通り、年間ベスト作品(SPIEL
DES JHARES)を審査委員が選ぶもので、1979年からもう22年も続いている。
これまでにも『うさぎとかめ』『スコットランドヤード』『シャーロック・ホームズ10の怪事件』『貴族の努め』『ブラフ』『カタンの開拓者たち』『エルフェンランド』など、長く遊びつがれる世界の名作、傑作を選んできた。
審査委員はゲームジャーナリスト(そんなものがあるのか?!)がなるのだけれど、新聞記者や大学教授あたりが何人も並んでいるのが、目を引く。あまり業界関係者臭くはない。
まあ、賞というのはどこでも同じで、上にあげたような名作が選ばれる年もあれば、‘どうしてこれが選ばれなかったんだ?!’という年もあって、波乱もまたおもしろい。
今年の候補作は、全部で12点。
楽しく遊べたものも多かった。アルファベット順に紹介していこう。
CAROLUS MAGNUS(カール大帝) レオ・コロヴィーニ作 ウィニング・ムーブズ社
いきなり、この異色作から。ドイツではこのところ、2人用のゲームが増えてきているが、これもその1つ。アメリカの対戦型TCGに対抗して、ドイツはドイツなりのボードゲームで、それをめざそうという意気込みだろうか。
プレイヤーは円形に散った領土−−カール大帝だからフランスだね−−をぐるぐる回りながら、それをなんとか自分の支配領土にしていこうとする。ゲームとしては、古典の『マンカラ』を連想させるけれど、それよりはちょっと複雑になっている。
なによりおもしろいのは、隣りあった支配領土をくっつけて、より大きな領土にしていけること。だから、ゲームは途中から、領土の数がだんだん減っていったりする。フランスを支配統合していった、ってことだね。でも、統合するのはいいことばかりじゃない。統合されて大きくなった領土を乗っ取られたりしたら、そこで勝敗が大きく傾いたりするから。
領土の美しさや、それがぎざぎざにくっついて大きくなる様を見るのは楽しい。
アイデア、備品ともに秀作だけど、ゲーム自体は得手不得手の人がけっこう出やすいところが難点かな(実は、ぼくは『マンカラ』系は苦手なんだよ)。
KARDINAL & KO:NIG(王と枢機卿) ミハエル・シャハト作 ゴルトジーバー社
これは、いかにもよくある中世ヨーロッパの支配を扱ったボードゲーム。でも、時間がそうかからず、3人で遊ぶときがいちばんおもしろいという、その点ではちょっと変わり種だ。
ヨーロッパ諸国に道が通っていて、プレイヤーはここに修道院をどう建てて繋げていくか、あるいは、隣りあった国同士にどう騎士を配置して、影響力を大きくするかを競う。
オーソドックスな造りと言えるけれど、これまでビッグゲームが多かったこの分野を、簡素化していこうという姿勢は好ましい。
KARDINAL(枢機卿) ヴォルフガング・パニッヒ作 ホルツィンセル社
これについては不明、まだ手に入れていない。どうも積み木系のゲームのようだ。
LA CITTA(都市) ゲルト・フェンヘル作 コスモス社
『AX』本誌8月号にも書いたけれど、今年の候補作の中では、ぼくがいちばん気に入っているゲーム。ルネサンス期のイタリアの小都市国家を好きなように作っていって、どう広げるかというゲーム。人口1000人を表わす小さなフィギュアとか、盤上に広がっていく都市とか、見た目の美しさはピカ一。
ゲームも1人30分計算で、4人だと2時間かかるけれど、遊んでいるうちはそれを忘れさせるほどスリリングだ。
内容については雑誌を見てもらうとして、作者のフェンヘルについても書いておこう。数年前『野菜畑』という小品ながら、よくできているなあ、と感心したゲームでデビュー。それからまったく音沙汰なしだと思ったら、5年をかけてこのゲームを作っていたらしい。本職は機械工で、暇を見つけてはテストプレイしていたという。確かに、ドイツの職人魂のこもった快作というべきだ。
遊んでもらったら、きっと気にいるはず。ちょっと体力気力が必要だけどね。
METRO(パリ地下鉄) ディルク・ヘン作 クイーン・ゲームズ社
30分ほどで遊べて、もう1回、というタイプのゲームがお好きなら、これがお薦め。
パリ地下鉄の路線ゲームということだが、それよりも四角い盤面に、蛇のように線路をニョロニョロ伸ばしていくのが楽しい。線路タイルを手札に1枚だけ持って遊ぶから、そう頭を悩ますこともない。でも、他のプレイヤーに邪魔されたり、邪魔したりで、喚声が起こるのはいかにもボードゲームを遊んだなあ、という気持ちになる。
パリが好きな人なら、地下鉄の地名や路線に親近感を覚えるかも。
OHNE FURCHT UND ADEL(操り人形) ブルーノ・ファイデュッティ作 ハンス・イン・グルック社
きれいなカードゲーム。なんだか日本のアニメ風の絵柄だ。
原題は騎士についてのことわざらしく、うまく訳せない。とりあえず、‘操り人形’となっているが、要するに、いかに国王をうまく操って、自分の勢力を伸ばすかということだ。
非常によくできた作品。
プレイヤーは各ラウンドに、国王、暗殺者、泥棒、枢機卿、魔術師、商人、傭兵のどれかになって、それぞれに独特の役割を果たせる。例えば、暗殺者なら、誰かの手番を1回休ませる、泥棒なら、誰かの資金を盗んでくる、というように。
そうして、各プレイヤーは自分の手番に自己資金でいろんな建物(カード)を建て、最終的にいちばん多かったプレイヤーが勝者、というもの。
このゲームのミソは、各ラウンド、誰がどの役割になっているかで、がらりと様相が変わる。それを考えて、前もって順に役割カードをこっそり選んでいくのだが、その推測とスリルがたまらない。
ゲームとしての完成度は高いので、これがゲーム大賞になっても不思議ではないが、これまで低価格のカードゲームは受賞したことがない(6ニムトもボナンザもだめだった)ので、注目されるところだ。
PORT ROYAL(ポート・ロイヤル) ヴォルフガング・パニッヒ作 クイーン・ゲームズ社
ヨーロッパはトランプが伝統的に盛んだ。なかでもトリックテイキング系と呼ばれるゲームはコントラクト・ブリッジ、スカートなどたくさんある。どれも、いちどはまったらやめられない魅力に満ちているが、ボードゲームにそれを生かそうという試みもまた多い。
ポート・ロイヤルもそうした1つ。プレイヤーは海賊となって、積荷をいろいろ集めるのが目的だが、それがトリックテイキングゲームとして進められる。
ただし−−やっぱり、これ、その手のゲームに慣れていないと、ちょっと苦しい。ぼくはこのゲームを好きな方だが、最初はどうプレイするのがいちばんいいのか、かなりとまどった(マストフォローなしというのは、やっぱり最初は考えてしまう)。
まずは、トランプのハーツ、スペード、ピノクル、ブリッジ、スカートからですよ。そういえば、日本の誇るトリックテイキングである‘ナポレオン’というのも、いいよなあ。
ボードとカードの併用という意味では、おもしろい試みだと思うけどね。
TADSCH MAHAL(タージマハル) ライナー・クニツィーア作 アレア/ラベンズバーガー社
常によくできたゲームを、それも年間何作も作り続けるクニツィーアの今年の代表作。
去年の『ラー』『サムライ』、その前の『チグリス・ユーフラテス』『砂漠を超えて』と、いつも遊ぶ前に、今年はどんなおもしろさを見せてくれるのかと、わくわくするゲームデザイナーだ。
今回はインドを舞台の陣取り、というより‘王冠取り’ゲーム。
先に書いた『王と枢機卿』にも似て、インドの各地方に影響力を持ちつつ、道(ルート)をどれだけ確保できたかを競う。
4人ほどで遊ぶと、じっくり楽しめて、しかも時間はそんなにかからない。この辺りの腕前は、もう職人芸の域に達している。
ただ、新しさという意味では、そんなに独創的ではないようにも思えた。
ドイツがこれまでの10年間に醸成してきたボードゲームの雰囲気、それがたっぷりつまっているというべきかな。
余裕と熟練の1作、保証付き。ただし、それ以上ではないところが、どこまで突き進むのだろうかと、これまで期待させてきたクニツィーアだけに惜しい。
TORRES(トーレス) ヴォルフガング・クラマー&ミハエル・キースリング作 FX/ラベンズバーガー社
こちらは、近年クニツィーアと常に競っている大ベテランのクラマーと新鋭キースリングのコンビ。この2人は去年『ティカル』で大賞を受賞した。
このゲームもやっぱりおもしろい。遊んだ感じはアブストラクトゲーム風なのに、そうしたゲームにややもすると感じる無機質なところがない。妙に相手とからみあう楽しさがある。
もちろん、それは運の要素を入れた入門ルールもあるからだが、それだけじゃないだろう。本来は緻密にプラニングをしていく1人用(あるいは対戦)ゲームが、多人数になることで、思いもかけぬことが起こる−−そこでのやりとり、つまり長期戦略と状況対応のバランスがとれているからだろうか。
ゲームの説明はちょっと難しい。各自が食膳のようなコマ(城の各階にあたる)をボードにいかに広げ、いかに積み上げるか−−面積X高さを競うもの。あちらを建てれば、こちらが建たず、悩ましいのをカードでどうカバーするかが遊びどころ。
これも得手不得手の出やすいゲームだが、人の足を引っ張ることはあまりできないので、爽やかに遊べる。こうしたタイプが好きな人も多いことだろう。
VINCI(ヴィンチ) フィリップ・カイヤーツ作 ユーロゲームズ社
これは昔からある名作ボードゲーム『シビライゼーション』や『ヒストリー・オブ・ザ・ワールド』のパロディか、とも思わせる愉快な作品。
ヨーロッパを舞台に、さまざまな種族が勃興しては滅びていく−−それを各プレイヤーは操りながら、ポイントを稼ぐというもの。
各種族に名前は付いていない。というより、ある特徴と特徴の組合わせで、ああ、これはまさしくフン族だなとか、いろいろイメージできるのが秀逸。中には、とんでもないもの(奴隷制暗殺種族?!)ができ上がったりして、プレイ中に‘あんまりだあ〜’という声が聞こえたりする。この辺りは、異星人の超能力がおもしろかった『コズミック・エンカウンター』を連想させたりもする。
ルールはただの陣取りゲームで簡単、それを種族のイメージ化でユーモラスなものにすることに成功している。
欠点は、見た感じがダサいこと。ドイツゲームというより、なんだか一昔前のアメリカの同人ゲームみたい。でも、ゲームのおもしろさは折り紙付き。ぼくは大好きだね。
zertz(ツェルツ) クリス・ブルム作 シュミット社
これもまだ遊んでいない。よくできたアブストラクトゲームだという評が、向こうの雑誌には出ているのだけれど……。
zoff im zoo(大騒ぎ動物園) ドリス・マテウス&フランク・ネステル作 ドリス&フランク社
カードゲームでは‘大貧民’風のものも、最近は人気が高い。特にヨーロッパではあまり知られていなかったせいか、いくつか人気作品が出ている(‘大貧民’は中国系のカードゲーム)。
これも動物をテーマにした大貧民。日本ではよく遊ばれているので、‘まあ、絵がユーモラスでいいけどね’という評価になってしまう。
確かに、遊びやすくて楽しいのはまちがいないが、大賞候補作というのはねえ。お国柄のちがいということだろうか。
という感じで、ざっと見てきたけれど、実にバラエティに富んでいるのがおわかりになると思う。
ぼくとしては『ラ・チッタ(都市)』がイチオシなんだけれど、ほかのゲームも人によって好き嫌いはあるだろうが、どれもよくできている。
毎年思うのは、ゲーム大賞を受けるのは名誉なことだが、この候補作に溢れる種類の豊かさ、質の高さこそ、喜ばしいことではないかという点だ。
それこそ分野が生きているという証だろう。大賞は気になるが、それ以外にもすごいものが多い−−その辺りは今回も存分に楽しめた。
まだまだドイツゲームは健在だ。
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