WEB版 第3回

テキスト/安田 均 

 いまどんなアナログゲームがおもしろいのか?
 ここで書いているように、ボードゲームに焦点を絞れば、活きのいい作品がつぎつぎと出ているのはドイツだ。
 だけど、アナログゲームはボードゲームに限ったわけではない。
 いま現在、商品としてもっともヒットをとばしているのは、何といっても『マジック・ザ・ギャザリング』をはじめとするTCG(トレーディング・カードゲーム)だろうし、ひと頃のピークは過ぎたとはいえ、RPGだってまだまだ元気だ。
 そうした状況をつぶさに見るためには、アメリカの大きなゲーム大会に行ってみるのが一番だろう。現地で見て‘これはなんだろう’と思っていたデモゲームが、1年もすると大ヒットしていることが、これまで何回も起こっている。
 最近では、『マジック・ザ・ギャザリング』がそうだったし(1993年)、RPGでサイバーパンクもののはしり『サイバーパンク2020』(1988年)や、今夏日本でも翻訳の出る人気吸血鬼もの『バンパイア』(1990年)にはじめてお目にかかったのも、そうしたジェンコンやオリジンという大きなゲーム大会だった。
 新しいおもしろいゲームは何か出ていないだろうか、そう期待しつつ、今年もオリジンゲーム大会の方を覗いてみた。

 まずはニューヨークで、本屋やおもちゃ屋を先にちょっと見てみる。
 本屋では、どこでもハリー・ポッターが大きく扱われている。来年の映画化に向けて爆走中というところか。
 一方、フォービドン・プラネッツというかつてSFブックショップでもあったところは、いまやコミックとフィギュアのショップと化してしまっていた。そのそばの巨大な古本屋ストランド・ブックスは、相変わらず健在。このところ自分の趣味と化しているコントラクト・ブリッジの本を手に入れようと探したら、出てくる、出てくる。1930年代からの著名な研究家やプレイヤーのハードカバー本があっというまに30冊近くなったので、半分くらいであきらめた。それにしても、ここの古本量はすごい。並の図書館などはるかにしのいでいるぞ。
 ブリッジに興味を持ったのは、もちろんおもしろいからだが、それと同時にアメリカの1920〜30年代、“狂乱の時代”と言われる時期が、ゲームにとって非常におもしろいのではないかと最近思ったから。というのは、この1920年代初期に、まず麻雀がブームとなり、ついで25年ころからコントラクト・ブリッジへの熱狂が起こり、そして、1930年の大不況の頃に、現代ボードゲームの嚆矢であるモノポリーが登場して、これも大ヒットした。いわば1920年代を通じて、アメリカはゲームの時代でもあったわけで、これが1970年代後半からの、ウォーゲーム、RPG、ゲームブック、コンピュータゲーム、TCGへと続く現在の“もうひとつのゲームの時代”と重なるようで興味深いのだ。
 さて、ブリッジはともかく、おもちゃの店で定評のあるシュワルツでは、派手なPRをしているものが目を引いた。『デジモン』がいろんなコーナーでプッシュされている。去年はポケモンの年、その後を狙おうというのだろうが、さて、どうなるだろう。
 ここで妙なトレカを発見。『ボーイ・クレイジー』というタイトルだが、これがなんと美少女ならぬ美少年を集めよう、というトレカ。中身はカードに実際の少年たちの写真が何百枚も映っていて、その外見、趣味、生い立ちなどが書かれている。実際に女の子がこんなのを集めて、品評会をしながら遊ぶものかねと、いくつか買って(うぉ〜、恥ずかしかったぞ!)帰って、SNEの女性社員に遊んでもらったが、結論‘ゲイ用なんじゃないの?’ということだった。

 というあたりでニューヨークを通過して、オハイオ州はコロンバスで開かれているオリジン・ゲーム大会へ。
 この大会は今年で26回を迎え、参加者規模では、ジェンコンというRPG 色の強い大会についで大きなものだ。
 ぼくがオリジンを好きなところは、特にどのジャンルのゲームにと、参加者の傾向が偏らないところだ。以前はウォーゲーム色が強かったが、いまではTCG、RPG、ボードゲームなど、あらゆるものが遊ばれている。だから逆に、‘今年はこれが目立っているな’と、わかりやすいのだ。
 今年も広いコンベンションセンターとホテルを借切って、至るところで、いろいろなゲームが遊ばれていた。『マジック・ザ・ギャザリング』の大きなトーナメントもあれば、現役軍人のウォーアカデミーという講義もある。会場を使って遊ぶライブRPGがあれば、ひと部屋で延々鉄道ゲームばかりを遊ぶ集まりもある、というように。
 新製品は、ゲーム会社のブースがいくつも並ぶディーラーズルームという場所があって、そこで発表されるばかりか、その場で買って遊ぶこともできる。このすぐに買えて遊べるというのが、普通の見本市などとちがって嬉しい。
 さっそく、ざっとディーラーズルームを回ってみた。一見したところ、特定のジャンルが特に盛り上がっているということはない。というよりも、ここ2〜3年の傾向か、メジャーな新製品を大々的にPRしている会社と、ガレージメーカー的で小ぶりながら、なにかあやしげでおもしろそうなゲームを作っているところとに二分化が進んでいるようだ。
 大手では、何といってもハスブロ社が買い取ったアバロンヒル・ブランドの復活が目についた。
 ウォーゲームのみならず、ファミリーゲームでも有名だったアバロンヒル社が、経営不振で大手のハスブロ社に買収されたのが昨年。アバロンヒルの名作群はどうなるのかと気をもんだファンも多かったと思うが、今年になって、ついにそのブランドが復活したのだ。
 ただ、これはウォーゲームファンには、ひょっとしたら残念かもしれない。一方、ファミリーゲームが好きだった人には朗報だろう。ハスブロ社らしく、新アバロンヒルの第1弾は、ボードゲームでは4大古典といわれる『ディプロマシー』と『アクワイア』。そしてさらに、『アクシス&アライズ』と『ストラテゴー』(軍人将棋)という一般的な名作路線を突っ走るようなのだ。もっとも、ぼくはこれらのゲームが大好きなので、まったく文句なし。
 特に『アクワイア』はモノポリーの影に隠れるようだが、実は最近のドイツボードゲーム隆盛の基礎はこのゲームが作ったのじゃないかと思えるくらい、ぼくには思い入れのある名作。こいつがちゃんと出してもらえたとなると、双手をあげて大歓迎だ。
『ストラテゴー』の方は、ちょっと変だった。なんとこれまでの原形を大幅に変えて、モンスター軍団が地形の上を敵の本陣めがけて進軍し、ぶつかりあう−−そう、まさにモンコレ(モンスター・コレクションTCG)みたいなゲームになっているのだ。その上、いろんな特殊能力を持ったモンスター軍団の駒や地形がコレクタブル(別のブースターで買い集める)というのだから、モンコレを作っている身にしては、‘これが新しいストラテゴーだって?!’と唖然。でも、遊んだらかなりおもしろかった。モンコレファンにもちょっとお薦めだぞ。
 しかもこのシリーズ、9月の新作は絶版になって久しい、これも名作『コズミック・エンカウンター』だという。会場でデモしていたが、ボードやエイリアンになかなか迫力があって、期待大だ(デモの兄ちゃんも、‘これまでのファンを絶対失望させない’とかなりリキが入っていた)。
 ハスブロにオリジナルの新作がないのは残念だが、この手の名作をいろんな形でどんどん復活させてくれるのは、やっぱり嬉しい。‘おもしろそうなのに、手に入らない’と嘆いていた人も多いのだから。
 片や、ガレージメーカー的な作品で目につくのは、チーパス・ゲーム社とスティーブ・ジャクソン・ゲーム社。
 チーパスは安っぽい作りながら、そのアイデアで群を抜いたオモロイゲームを作るところ。今年の新作2つもめちゃ楽しい。
 特に『ビッグ・アイデア』というのがいい。これは形容詞カードと名詞カードを組合わせて、これまでにない新製品を売り出すベンチャー企業のゲーム。組合わせ言葉のばかばかしさを楽しむというだけなら、これまでにもそうしたアイデアはあった。ここでは、それをひとひねりしてあって、パーティゲームとしては最高。‘メンソレ・パンツ’とか‘メキシカン・ロボット’などユニークな言葉がとびだし、しかも、それがちゃんとベンチャー企業のゲームらしくなっているところがミソ。おまけに、1つが3ドルというのも、信じられない。ここのゲーム、どこまで突き進むのだろうかと、相変わらず期待させてくれる。
 スティーブ・ジャクソン社も、怠惰点を集めるというユーモアゲーム『シェギーク』(おかしな仲間たち)と、『シリコンバレー・タロット』というユニークなカードゲームが2つ。どちらもおもしろい。
 会場では『シリコンバレー・タロット』以外にも、占いとゲームを結びつけるようなものがいくつか出ていた。これはひょっとしたら、ひとつの流れかな。
 RPGでは、なんといっても、今年は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下『D&D』)の第3版が出るということで、これが目玉だろう。ただ、正式発表は8月のジェンコンなので、ここではデモだけ。あとRPGでは、その『D&D』と『ディアブロ2』が結びついたゲームとか、『ルーンクエスト』の新作とそのコンピュータゲーム版、『バンパイア』のこれもコンピュータゲーム版など、かなりコンピュータゲームとのジョイントが目立った。
 一方TCGでは、メジャーリーグを遊ぶ『MLBショーダウン2000』やプロレスTCGなどスポーツもの、そして、ファンタジーのベストセラー『時の車輪』シリーズのTCGや、ハリー・ポッターTCG(これはデモだけ)など原作ものが目についた。
 この中では『MLBショーダウン2000』が、かなりいける。もともと野球カードというのは子供の頃、だれでも集めたくなったはずだからなじみがある。これも基本はそれ。メジャーリーグの選手500人近くがカードになっている。
 で、ゲームの方、これがしっかりと作ってあるので、つい熱中してしまうのだ。20面体サイコロを使って、選手のカードデータと見比べ、バッターとピッチャーの対戦ごとにどんどん結果を出していく。ただ、これだけなら簡単すぎるので、手元の作戦カード(フルスイングとか全力投球など)を出しあってバリエーションをつけている。野球カードというと日本でもあるが、ゲームになったものはちゃちっぽいものしかこれまでトレカでは出ていない。日本版をどこか出さないのだろうか?
 他には、ブリッジではないけれど、トランプそのものも工夫して新作が出ていたのがおもしろかった。
 バイシクルブランドで有名なトランプメーカーでは、『ラミー』とか『スペード』とかゲームごとのトランプを売り出している。これが2パックでちょっと粋な上に、それぞれのゲーム用に工夫されているのがいい。例えば、『カナスタ』だと、面倒臭いカードごとの得点計算がすぐにわかるようになっている。
『カナスタ』は別に1つ、今年で50周年ということで、バリエーションつきの専用カナスタゲーム『カナスタ・カリアンテ』というのも出ていた。『スペード』がこのところ流行っていると聞いたが、つぎはこれなのだろうか?
 トランプはブリッジ以外にも、おもしろいものはすぐに10以上見つかるくらい、広がりのあるゲームだ。逆にいうと、これまでそのあまりの汎用性に、商品としてはおとなしくて目立たなくなってしまっていた。バイシクルブランドがそのあたりを考慮して、こうした専用パックを出しているのは、おもしろい試みだろう。

 最後の方はちょっと駆け足の紹介になったけれど、一言でいうと、新作ゲーム群は非常にバラエティにとんでいた。いまのところ、インスタント・ヒット作というのは見当たらないが、こうした傾向が続いている限り、RPGやTCGの“ようなもの”が近い将来生まれてくるのではないか、というのがいつわらざる感想だ。